事務所併用住宅:ハナミズキ通りの家

敷地環境
遊歩道に面した閑静な住宅街。
敷地北側が遊歩道、東側及び南側は住宅、西側が4m道路。
敷地に面した遊歩道はハナミズキの木を中心に、多くの植栽が植えられており、
敷地に対し北側とはいえ恵まれた住環境となっている。

施主からの要望
1.1階が事務所とCafe、2階を住居とした構成としたい。
2.ハナミズキ遊歩道の緑を楽しめる家としたい。

設計コンセプト
1階に事務所&Cafe、2階が住居の店舗併用住宅。

計画地は風致地区に該当し、隣地から1m、道路から2mの外壁のセットバックが指定されている。
但し建築基準法上の建蔽率から緩和される跳ね出しのバルコニーはその限りではない為、法の緩和を最大限生かした形で計画された。

跳ね出しバルコニーを有効に使うことと、2階のリビング・ダイニングの空間を梁のないダイナミックな空間とすることを考慮した結果、構造は壁式RC造とした。
外観はコンクリート打放し仕上げとブナの熱加工処理材、漆喰調のマットなホワイト色の塗装で構成されている。

外壁のすべてをコンクリート打放し仕上げとした場合、その質感が閑静な住宅街には少し強い印象を与えてしまう為、あえて遊歩道側の一部にブナの熱加工処理材を貼り、2階のバルコニー手摺壁を白い塗装で仕上げた。

2階遊歩道側のバルコニーの手摺もこの天然木を使った縦格子で作られている。
格子デザインはそのまま1階の事務所&Cafe入口上部の軒天井につながっており、シャープでありながら和のテイストを醸し出し、コンクリート打放し仕上げとあいまって周辺環境に溶け込んだ外観となっている。

1階Cafeは遊歩道に面しテラス席を設けることで、ハナミズキをはじめとした周辺の緑を眺めながら休憩ができるように計画されている。
同じく1階に設けられた事務所はCafeを運営している会社の為、事務所の打合せ室をCafeと事務所の間に配置することで、引き戸の開閉により打合せ室が客席にも可変できるように計画されている。

2階は住居スペース。
水周りや個室を極力小さくまとめ、家族の団欒の場となるダイニング・リビングスペースを最大限確保した。

リビング・ダイニングは17畳程度のスペースでありながら、建物高さ制限いっぱいまで高くした高天井がその面積以上に感じられる大空間となっている。
予算の都合から内外の壁及び天井はコンクリート打放しで仕上げられたが、その質感や色とブラック色のサッシとバーチカルブラインド、床に貼られたクルパウという南米の堅木の独特な縞模様などが一体となって、落ち着いた空間となっている。

リビング・ダイニングを囲うように南北に跳ね出しのバルコニーを設けた。
南側のバルコニーは周辺からの視線を考慮し、白い手摺壁で覆っている。
北側はハナミズキ遊歩道に面しているため、大きな開口からすばらしい借景を居室内から楽しめるようにあえて手摺の格子の高さを低く抑えた。
リビングから眺めるハナミズキ遊歩道沿いの多くの植栽は想像以上にすばらしく室内から連続するバルコニーを通し、内外一体となった空間となっている。

キッチンはコンクリートブロックで囲まれた半オープンキッチン。
左右どちらからも動線が確保され、使いやすく配置された。キッチンからはリビング・ダイニングはもちろんのこと、外部の緑を満喫しながら料理ができるように計画されている。

洗面・浴室・トイレは在来工法で作られた一体空間となっている。
あえて一室にまとめ、それぞれを扉で仕切らないこととリビングと浴槽との壁を透明ガラスとすることで、狭さを感じさせない広がりのある空間となっている。
浴槽上部にはトップライトが設けられ、やさしい光が空間をやさしく包み込んでいる。

求められた設計要望はシンプルではあるが、限られた建設可能床面積の中でどれだけ豊かな空間を創り、恵まれた周辺環境を内部に取り込むかに重点をおいて設計された。
季節ごとに表情を変えるハナミズキ遊歩道沿いの景観を、1年を通して十分に楽しめる家となっている。

場所:埼玉県さいたま市
構造:壁式RC造2階建て
用途:事務所併用住宅
竣工:2014年
BLOGで工事過程を見ることが出来ます。→こちらをクリック

竣工写真 撮影/北嶋俊治