昨年末、衝撃的なニュースがテレビを賑わした。
耐震偽装事件だ。
あれから5ヶ月。
ついにというか、やっというか、姉歯氏が逮捕された。
これを早いと考えるか遅いと考えるか。
いずれにせよ、姉歯氏が逮捕されたところで、問題となったマンション購入者が救われることはない。
一級建築士の資格を持つ私としても、この事件は様々なことを考えさせられた。
姉歯氏が行なったことは、まさに殺人未遂だ。
しかしながら、姉歯氏本人の意思だけでこのようなことが行なわれるはずはない。本人も言っているように外部からの圧力があったのだろう。
もちろん、圧力があったからといって、許される行為ではない。
決して姉歯氏を弁護するわけではないが、やはり圧力をかけた側に大きな問題があるように感じる。そしてそこを付きとめて行かないとこの問題はまた繰り返されるだろう。
今回問題となった人すべてが、
売ってしまえばいい、出来上がってしまえば鉄筋の本数などわかりはしない、確認申請許可を取っているので、仮にばれたとしてもその責任は行政にある・・・・などとおそらく考えていたのではないだろうか。
逮捕により、警察は今回の事件の本筋を徹底解明してほしい。
たまたま、普段から協力事務所として一緒に仕事をしている構造事務所の方と電話をする機会があり、こんな話をした。
彼が構造設計をした物件で、施工業者が勝手に構造図面とは異なる施工をして、それがばれてしまい、今となって、その施工方法でも構造的に問題がないか強度計算をやり直してほしいと設計事務所から頼まれたとのこと。
なぜこんなことが起きるのか。
こういうことだ。
あるオーナーから施工業者に建物の依頼が入る。
施工業者は少しでも自分の会社の利益を上げたいがために設計事務所に非常に安い設計料で設計を依頼する。
設計事務所は構造計算を構造事務所に依頼する。もちろん元々の設計料が格安の為、必然的に安い金額での依頼となる。
現場が始まる。
本来なら設計事務所が工事監理を行う。ただし、このような場合は格安の設計料のため、工事監理はほとんど行なわれない。なぜならば、工事監理を行う程の設計料をもらっていないからだ。同じことが構造事務所にもいえる。
結果として、工事会社はやりたい放題。
あとからばれて、問題となる。
今回のケースはまだ、途中で気付いて設計事務所から構造事務所に再検討の依頼が来ただけましだ。
多くの場合は、耐震偽装のマンション同様、出来てしまう。
なにも知らないオーナーは、○○工務店さんは、安く作ってくれてよかった、よかったと大喜び。
それはそうだ、設計事務所による工事監理がいかに大事か、まさかこんなことが行なわれているなど、一般の人(オーナー)は知るはずもない。
姉歯氏のケースは、これが、施工業者+設計事務所+構造事務所のみんが初めから判っていたのだ。
決して、耐震偽装の話が、たまたまではないのです。
警察は姉歯氏の行なった行為をしっかりと取り調べ、今後行なわれる裁判を通して、単に偽装を行なったか否かだけではなく、なぜこのようなことを行なわれたのかという根本的な問題点まで追求してもらいたい。
私のHPでも、設計事務所の工事監理がいかに大切かをわかりやすく解説しています。一度覗いてみて下さい。→工事監理についてはこちら
カテゴリー: 日記・コラム・つぶやき