昨年の仙台建築ツアーに続き、今回は2泊3日で、
福岡の博多に行ってきました。
博多に行くのは約12年ぶりでしょうか。
当時まだ建築学生だった私は、同期の友人を誘い、レンタカーで熊本のアートポリスや
博多の建築を観て廻りました。
今回は羽田から福岡まで飛行機で行き、フライト時間は1時間ちょっとでした。
福岡空港は市内まで地下鉄で10分という場所にあり、本当に便利。
早速、博多駅で下車し、徒歩にて建築ツアーを開始しました。
まずはじめに行ったのはキャナルシティーという、複合ショッピングモールでした。
これは、12年前に訪れた時にも見学していますが、
当時より植栽が生い茂り、開放的な外部廊下を歩きながら懐かしく当時を思い出しました。
私は個人的にはこのような大きな建築はあまり興味がないので、さらっと見学をして次の目的地へ移動しました。
次は今回の見学ツアーで一番楽しみにしていた建物です。
吉村順三氏設計の「河庄」という、高級すし屋さんです。
吉村先生の作品集などで写真では見たことがありますが、実際に訪れるのは初めてです。
外観写真でもお分かりのように、建物全体がルーバーで覆われているのですが、
1階部分は木製、2階部分はコンクリートのルーバーとなっています。
全体のバランスがとてもきれいで、周りの風景の中に気持ちよく建っているといった感じがしました。
内部も見学をしたかったのでお昼ご飯を頂きました。
1階はカウンター席で2階は座敷の個室がいくつか配置された構成になっています。
1階のカウンター席に座りましたが、ほかのお客さんがいましたので写真撮影は控えました。
中に入って最初に感じたことは、非常に天井高さが低いということでした。
これはカウンター席に座った目線を考慮して低くしたのか、道路斜線等の法規的な関係で低くしなければいけなかったのかは不明ですが、いずれにしても、ちょっと低いかなと感じました。
内観も外観同様、木製のルーバーを取り入れ、デザインに統一性をもたせており、非常に落ち着いた空間となっています。
食後、職人さんに建築を見学に来ましたと話した所、偉い方が出てきて2階を案内していただけることになりました。これは予期せぬことで、博多まで来た甲斐がありました。
2階の前面道路に面する小部屋には、外観で見えていたコンクリートのルーバーの内側に坪庭を設けており、外部と内部との間に中間領域を設けることで、より空間に奥深さを与え、かつ居室からの眺めを考慮したのではと感じました。
各部屋ごと、少しずつデザインを変えており、床柱をスチールとしているなど30年以上前に建てられたとは考えられないほど斬新ですっきりとした空間となっている印象がしました。
次に向かった建物は基本設計をエミリオ・アンバースがおこない、その後を日本設計がしたアクロス福岡です。
かなりバブリーな設計となっていますが、この建物も学生時代に訪れた時に見学しました。
建物の目の前が公園になっており、その連続性を意識して雛段状に緑化計画がなされているのが特徴です。
この植栽の中にある外階段で屋上の展望スペースまで上がれますが、かなりしんどいので体力に自信のあるか方のみ登って下さい。
ちなみに、エレベーターではいけません。
1日目はこれで終了。夜、中州の屋台へ繰り出しました。
2日目。
高松伸氏設計の建物を二つ見てきました。
二つとも近接して立っており、ある専門学校の校舎です。
一つは、プロフィリットガラスという、この字型のガラスを建物全面に設置し、ガラスボックスのような建物です。非常にシンプルで、かつシャープな外観となっています。
もう一つは、これぞ高松伸さん設計といわんばかりの建物です。
建築の設計に関係する方なら、この外観を見ただけで設計は高松さんだとわかるほど、特徴的でダイナミックなデザインとなっています。
しかし、アクロスといい、この建物といい、どのくらいのコストで創られているのか是非伺いたいほど、
お金がかかってるなあという印象でした。
次に向かったのは、吉柳満氏設計の玄瑛というラーメン屋さん。
内部は、客席が雛段場に配置されており、正面中央でマスターが
ラーメンを作るのを観ながら食事が出来る仕組みになっています。
これは以前所長日記でも紹介しました、JR上中里駅前にある岡ちゃん劇場という焼き鳥屋さん(同じく吉柳満氏設計)と同じコンセプトとなっています。
内部で使用している木材は電柱柱の古材を再利用しているそうで、何年か後には取り壊しされることが決まっているとのこと。
その為、超ローコストで造られていますが、お金を掛けなくても良い空間は出来る見本のような設計だと思います。
玄瑛の目の前に、同じく吉柳氏設計の会員制バーがあるのですが、中には入れませんんでしたので、エントランスのみ写真を撮りました。
次に向かったのは、磯崎新氏設計の「やま中」という、おすし屋さんです。
日曜日だったのでお店は休みで中は見学できませんでした。
コンクリート打ち放しと、スチールサッシで構成された、非常にシンプルなデザインです。
ガラスの内側には和紙が貼られており、おそらく夜ライトアップされた表情は非常に良いのではないかと想像出来ました。
コンクリートとガラスというあまりにシンプルなデザインなので、安藤忠雄氏の設計と間違ってしまう人もいるかもしれません。
個人的には非常に大好きなデザインです。
これで2日目は終了。
最終日は、まずホテル近くの地下鉄エントランス。
設計は葉祥栄氏です。
ガラスで構成された、モダンなデザインです。
最近、このようなガラスを多用した建築が多いのですが、いつも汚れのことを
気にしてしまします。この建物は非常にきれいだったので、
おそらくかなり短い期間ごとに清掃をしていると考えられ、それはそれで大変だなあと感じました。
次は最後となりますが、電車で20分ほど離れた場所まで行きました。
ここには磯崎新氏が総合プロデュースして、世界中の建築家が
それぞれの集合住宅を設計したネクサスワールドという街区があり、
まとめて色々見学が出来ました。
一つ目はアメリカの建築家マックの設計です。
いかにも外国人建築家といった、鮮やかな色使いをしています。
かなり竣工してから時間がたっていますが、とてもきれいでいた。
次はOMA/レム・コールハース設計。
ネクサスワールドを見学に来る方のほとんどが、この建物を目当てにしているといっても言い過ぎではないほど、有名な建築家の設計です。
1階は店舗となっており、上部が住居の構成です。
上層部分の外観は巨石風コンクリート壁でできており、かなり好みが分かれるのではと感じました。
流れるような曲線ファサードはとてもいい感じで、写真ではわかりづらいですが、店舗裏側に各住居に採光を確保する為の中庭を設けています。
ちなみにこの建物は1992年の日本建築学会賞を受賞しました。
次はスティーブン・ホール設計です。
やはり1階部分が店舗で、上層を住居としています。
各ブロックを凸凹に配置することで、採光を確保しています。
窓の形がそれぞれ違っており、飽きの来ない、特徴的なファサードとなっています。
次は早稲田大学石山修武研究室です。
唯一の日本人建築家による設計です。
外観はコンクリートとアルミスパンドレルで構成されており、ほかの建物に比べると落ち着いた感じですが、手摺や庇のデザインをみると、石山先生らしさを感じさせられました。
次はアトリエ・クリスチャン・ド・ポルザンパルク設計です。
四つの棟で成り立っています。
全面道路に面したシンメトリーな建物と、御影石を外壁に打ち込んだ建物、物見塔のような建物です。
そのデザインに全然共通性はなく、あえて異なる表情の棟を四つ配置したと考えられます。
外観に御影石を打ち込んだ棟は、かなり威圧的な感じがし、物見塔のような棟はどこかメルヘンチックで、正面の白い棟は、シンプルにデザインしています。
どの建物も並んで建っているので、一気に見学が出来、楽しかったです。
このプロジェクトはかなり前に行なわれたので、私以外に見学者らしき人は1人もいませんでしたが、当時はかなりの建築関係の人が見に来ていたのではないでしょうか。
これで今回の福岡・博多建築見学ツアーは終了。
まだだまたくさんみたい建物はありましたが、時間の関係上、これが限界でした。
博多市内はほとんど徒歩による移動でしたのでかなり体力を消耗しましたが、
大変勉強になりました。
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